五輪の7月開催にこだわるあまり、感染の情報公開が操作されたのではという疑念は消えない(dpa/ 時事)

新型コロナウイルスが世界を震撼させている。欧米の多くの国は、国境閉鎖、外出禁止など感染拡大を防止するために徹底した手段をとっている。生命を守るためには、少なくとも一時的に、また後述する条件の下で私的自由を制約することも仕方ない。今必要なのは、政府が権力を適切に使うことであり、それを支える基盤は、政治家や行政職員の職業倫理である。

この危機の中で、アルベール・カミュの小説、『ペスト』が売れているそうだ。この小説は、突然ペストが流行し封鎖された都市の中での、医師や官吏の必死の戦いを描いた物語である。主人公のリウー医師は次のように語っている。

「今度のこと(ペストの流行)は、ヒロイズムなどという問題じゃないんです。これは誠実さの問題なんです。こんな考え方はあるいは笑われるかもしれませんが、しかしペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです。一般にはどういうことか知りませんがね。しかし、僕の場合には、つまり自分の職務を果たすことだと心得ています」

今、各国で数えきれない専門家や公務員が献身的に働いている。他者のため、社会のためという公共的精神は、政府部門であれ民間部門であれ、立派な人間に共通した美徳である。本来、政治家や官僚にこそ公共的精神が必要とされるはずである。しかし、わが国の最大の不幸は、この危機的状況の中で公共的精神を軽侮する人間が最高権力者だという点にある。

「桜を見る会」の疑惑に加え、先日、森友学園への国有地廉売に関連して、公文書改ざんに加担したことを苦に自殺した財務省職員の遺書、手記が公表された。この事件の本質は、安倍晋三首相と親しかった人物が経営する学校法人に国有地が大幅に値引きされて売却されたことである。その不当性を国会で追及されたときに、首相が「私や妻が関わっていたら総理大臣も政治家も辞める」と答弁したことから、事件のもみ消しを図るための大規模な工作が行われた。