「ハイ! ミホ、生きてる? 私はシェルター・イン・プレイス(自宅待機令)の第1日目の朝を迎えています」

そんな書き出しで、サンフランシスコ在住の友人でジャーナリストのケイトからメールが届いた。3月17日の午前中のことだ。

新型コロナの感染拡大を防ぐ手段として、カリフォルニア州北部のサンフランシスコを含む6つの郡が、700万人近い住民全員に“火急の用事”がない限り、3週間は極力自宅から出ないように命じた。

バーやレストランはテイクアウトを除き営業禁止。住民は、スーパーや薬局に食料や薬など必要なものを買いに行ったり、近所を1人で、もしくは家族と一緒に散歩したりジョギングしたりする以外の外出は禁止だ。基本、友人と会ったり、集まったりすることも許されない。命令を破れば、最悪、禁固刑もありうるという、ほぼ戒厳令に近い感じの全米一厳しい措置だ。

ケイトのメールの次の文を見て、凍り付いた。

「実は、サンタクララ郡に住む40代男性の親戚がコロナに感染していた。入院して1週間ほどICU(集中治療室)で人工呼吸器をつけて治療を受けていた。やっと今、ICUからは出られたところだけど」

2週間分の食料を備蓄

サンタクララ郡といえば、カリフォルニア州のコロナ激震地だ。同郡の感染者は3月16日時点で138人に達した。わずか3日間で感染者72人増という驚異的な速度でウイルスが蔓延している地区なのだ。

サンフランシスコ市内の大学病院のすぐ近くに住むケイトは、ヘリコプターが病院の屋上に着陸したのを目撃したという。「コロナ感染者の緊急搬送だったのかも」。メールはさらに続いた。「経済的打撃は大きいけれど、ベイエリア一帯が外出禁止を命令してくれて正直ほっとした。感染していることに気づかず、数千人以上の人々が外を歩いたら、危機的な状況になる。ミホ、今後何があってもいいように、2週間分の食料は備蓄しておくようにね」。

2週間分の食料──。その文字を読んだ瞬間、ため息が出た。トランプ大統領が国家非常事態宣言を出してから、筆者が住むロサンゼルス(以下LA)のどこのスーパーでも食料品の棚が、空っぽの状態が続いているからだ。

ロサンゼルス市内のスーパー「ホールフーズ」。棚は空っぽだ(撮影:長野美穂)

3月13日、西海岸時間の正午すぎ、医師やウォルマートなど企業のCEOらを従えたトランプ大統領が、新型コロナウイルスのパンデミックを「国家の非常事態だ」と宣言した。州政府や自治体に500億ドル(5兆4700億円)の資金援助をすると告げた。

その夜、7時半すぎに近くのスーパーに買い物に行くと、オートミールの棚が空っぽだった。あれ?と思い、パスタの棚に進むとそこも空。慌てて周囲を見回すと、パスタソース、缶詰、水、卵、肉、パン、バターなどのあらゆる食品が棚からこつぜんと消えていた。

呆然と立ち尽くしている初老の男性と思わず顔を見合わせる。彼は「アメリカ人は、本当にバカだ!」と吐き捨てるように言った。「俺もアメリカ人だが、すぐパニックになり、食料を買いあさる同胞の単細胞さが耐えられない。いつも消費ばかりして、いざというときのための貯金400ドルすらない国民なんだ」。