新型コロナウイルス対策で記者会見に臨む安倍首相。左奥は菅義偉官房長官(毎日新聞社/ アフロ)

2週間余り前の朝日新聞と読売新聞を読み比べると面白い。改めて指摘するまでもなく、新聞各紙の安倍晋三政権に対する取材の立ち位置は異なる。「安倍1強」が確立されたこの間、同政権の主要政策や首相の政治手法について厳しい報道姿勢で臨んでいるのは朝日新聞、毎日新聞、東京新聞であることに異論はないはずだ。他方、安倍政権(政策)に理解を示す、というよりも好意的な社論を展開しているのが読売新聞と産経新聞であり、日本経済新聞はその特性からおおむね寛容な論調に終始している。

では、当該の朝日、読売両紙の記事(3月15日付朝刊)を紹介する。朝日新聞7面全ページの「政治フロントライン」と題したコラムは、「二つの『保守』─首相・石破氏の因縁」の見出しを掲げ、リードで次のように記述している。

《政府と自民党、それぞれの支柱として手を携えたのも今は昔。安倍晋三首相(65)と、石破茂元幹事長(63)を分かつ溝はいま、政権の行方を占う対立軸と化している。融和し、疎遠となり、対決へ。7年余に及ぶ長期政権下で2人が刻んだ因縁は、来たる政争に備える自民党の面々を巻き込み、新たな局面を迎えつつある。》

同記事は、今後の政局の焦点である「ポスト安倍」を見据えるうえで、マスコミ各社の世論調査で支持率が断トツの石破氏を安倍首相と「同等」に扱っている。記事を書いた石井潤一郎記者が石破派担当だったこともあり、「石破氏ヨイショ」記事との指摘があるのは承知している。

それでも、筆者が刮目(かつもく)したのは記事中の《1月末のある夜、都心のホテルのレストラン。石破派会長代行の山本有二・元農林水産相は政権の番頭・菅(義偉)官房長官と向き合った。》のくだりである。初めて耳にした核心情報であり、注目するのは当然だ。安倍氏が石破氏だけには首相の座を譲りたくないとの強い思いを抱いていることは百も承知であり、秘密会食が後に明るみに出ることも容易に想像できたはずなのに、なぜ菅氏は石破派の番頭の誘いに乗ったのか。