賃上げは労働者のためならず、企業がメリットを受けるものだ 日本総合研究所 副理事長 山田 久氏に聞く

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やまだ・ひさし 1987年京都大学経済学部卒業後、住友銀行入行。同行経済調査部、日本経済研究センター出向を経て93年に日本総合研究所へ。2011年調査部長兼チーフエコノミスト、17年理事、19年から副理事長。京都大学博士(経済学)。著書に『失業なき雇用流動化』『同一労働同一賃金の衝撃』など。(撮影:梅谷秀司)
賃上げ立国論
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日本では四半世紀にわたり賃金が下落・低迷基調にある。世界では賃金が持続的に上昇していくことが常識であり、日本もこうした当たり前の状況を取り戻す必要があるのではないか。

──かねてから、賃上げの必要性を主張されています。

まず、少し足元の状況についてお話ししましょう。今は新型コロナウイルスの感染拡大防止が優先なので、生産や消費を抑制せざるをえない状況にあります。そこで、経済的な2次被害を出さないように、中小企業の資金繰り対策や雇用調整助成金などの政府による支援策の実施はもちろんのこと、各経済主体も過度に萎縮せず、合理的に冷静に行動すべきです。

こうした状況を前提としつつも、今こそ基本給を着実に上げるベースアップが必要です。今般の問題はいずれ終息するのですから、適切な行動をとっておけば今年後半には経済は回復に向かうはずです。対応を間違うと、景気が底割れしデフレに戻ってしまう。

2008年のリーマンショックのときに、輸出主導型経済の日本、スウェーデン、ドイツは輸出の大幅減で実質GDP(国内総生産)がマイナスになりました。ところが、スウェーデンは2年、ドイツは3年で、GDPがショック前の水準に戻ったのに、日本は5年もかかった。欧州の国々では賃上げを続けたことにより個人消費の落ち込みを防いだ一方、日本は賃金の水準を切り下げたことで、消費も大きく落ち込んでしまったからです。一時的なショックに対する過度な悲観が後まで悪影響を及ぼす「履歴効果」が大きく働いた。こうした事態が再び起きるのを避けるために、政府も今こそ賃上げを要請すべきです。

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