スペースジェットは開発中の「M90」に加え、さらに次の「M100」の設計にも乗り出している(提供:三菱航空機)

「関係者にはたいへん申し訳ない」。三菱重工業は2月、社運を懸け事業化に取り組む小型ジェット航空機「三菱スペースジェット」(MSJ)初号機納入を今年夏から2021年度以降に延期すると発表した。会見で泉澤清次社長は硬い表情を崩さなかった。

08年に事業化を決定してから6度目の延期。当初は13年に納入予定だったため、少なくとも8年以上は遅れることになる。

これまでに投じてきた開発費は8000億円近くに上り、事業化までに1兆円以上かかるのは確実だ。今20年3月期末には過去に計上していたMSJ関連資産1300億円をすべて減損処理し、今期の開発費1400億円と合わせた関連損失は2700億円に膨らむ。好調なガスタービン事業などで稼いだ全社の事業利益はほとんど吹き飛ぶ。

延期の直接原因は、機体の安全性を国が証明する、米国での型式証明取得に必要な最後の試験機が遅れたことだ。20年初めに開発拠点の名古屋から米国へ飛行するはずだったが、まだできていない。

なぜこれほどまでに手間取るのか。航空機の設計・開発には特殊な技術や経験が必要だったにもかかわらず、それが不足していたことが背景にある。16年に航空機開発に実績のあるカナダ・ボンバルディアからMSJを開発する三菱航空機に移った、開発責任者のアレックス・ベラミー氏は「計画は不透明で、日々の働き方も不適切だった」と移籍当時を振り返る。それ以降、大量の外国人技術者を導入し、組織の立て直しを急いだ。17年の5度目の延期の際には電気配線の設計をやり直さなければいけないことが判明。昨年までに900カ所以上の設計変更を行った。