市場には、経済学者ハイエクが説いたように「知識の分業」という優れた特徴がある一方、将来の不確実性を前にするとそれが機能しないという面がある。

今回の経済・金融ショックの根源は新型コロナウイルスだが、実際に市場を動かすのは、あくまでそれによって右往左往する人間だ。主流の新古典派経済学の教義は、簡単に言えば「人間が合理的に判断して行動すれば、その集合体である市場や経済全体もうまくいく」という一種の同義反復だが、逆に言えば「誰もが次の展開を予想できない不確実性の下では、人間は合理的な行動を取れず、よって市場も合理的に機能しない」と言っているに等しい。

ただ、不確実性の下で人間がてんでバラバラに不合理な行動を取るなら、まだましだ。経験上言えるのは、「みんなが一斉に同じ不合理な行動を取る」こと。そして、それが市場の大惨事を招く。