稲葉清右衛門「ついてこれない人はやめてもらって結構」 1985年、ファナック社長が語っていたこと

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稲葉清右衛門(いなば・せいうえもん)/大正14年3月5日生まれ。茨城県出身。東京大学第二工学部を昭和21年卒業。同年富士通信機製造入社。47年富士通ファナック(現ファナック)専務、同年富士通取締役、49年ファナック副社長、50年社長に。

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富士通から分離して誕生したファナック。社名の「FANUC」は富士通の数値制御装置(Fuji Automatic NUmerical Control)のブランド名。ちなみに、富士通が売っていた汎用コンピューターのブランドは「FACOM」だった。富士通から分離独立することで独自の発展を遂げたファナックを育て上げたのは稲葉清右衛門氏(1925〜)である。1985年(昭和60年)の編集長インタビューでは、「ついてこれない人はやめてもらって結構です」と言い切る。「研究員はおそらく完全にFA化しても、さらにその上に乗っかって働くでしょう。土、日ぐらい休むでしょうけど、研究所の研究員は、研究開発の仕事に生きがいを感じている。日本人が持っている精神的な面を残しておかないと、FAだけ徹底しても国際競争には勝てない」と猛烈経営について率直に語っている週刊東洋経済3月21日号にはファナックに関するリポートを掲載しているので合わせて読んでほしい。

10年たてば〝新日本人〟でも生きがいを感じる会社に

ロボットがロボットを造る会社と言われるファナック。稲葉社長の〝徹底経営〟浸透で高収益をあげる。ただ妥協を許さぬ経営も〝新日本人〟に果たしていつまで通用するか。

 

――ファナックが高収益をあげているのは、稲葉流の〝徹底経営〟によるものだといわれていますが、GM(ゼネラル・モーターズ)との合弁会社でも、その稲葉流を貫徹しているのですか。

稲葉 GMファナック・ロボティックス(GMF)は社長以下ほとんどの社員、幹部がGMからの出向社員ですから、GMの経営をそのままやっているわけです。

ただ、私が会長をやっていますから、経営の考え方については妥協しません。GMFがとっている経営のやり方について、われわれの経営のやり方と少しでも食い違いがあれば、いつも是正してもらっている。もっとも、そうしたトラブルは非常に少ない。これは、ファナックとGMとの経営のやり方がきわめて似ているということかもしれない。

――例えば……。

稲葉 一昨年、そのジョイントベンチャーの一部幹部が、株式を上場することを企画した。だけど、株はGMが50%、ファナックが50%持っているわけですから、どちらかが株を手放さないと、上場することは不可能なんですね。

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