新型コロナウイルスへの国民の不安が高まり、マスメディアの報道の大部分がこの問題で占められている。だが、新聞の紙面にもテレビの放映時間にも限りがある。新型コロナウイルスに関する報道が増えれば増えるほど、ほかのニュースが脇に追いやられる。その結果、国際情勢の重要事項情報が抜け落ちてしまう。

その1つが、2月21日に行われたイラン国会(定数290)の選挙だ。〈イラン内務省は23日、開票結果を公表した。各政治勢力別の議席は公表していないが、地元メディアによると、反米を基調とする保守強硬派がテヘラン選挙区(定数30)で議席を独占するなど、大勝した。投票率は約42.6%で、前回の約62%を下回り、過去最低だった。/イランでは、精鋭部隊・革命防衛隊のソレイマニ司令官が1月に米軍に殺害されて以来、反米姿勢が強まっており、保守強硬派が議会で主導権を握れば、米国との対立がより先鋭化する恐れもある。/国会選挙をめぐっては、最高指導者ハメネイ師の影響下にある護憲評議会による事前の資格審査で、対外融和路線のロハニ大統領を支持する改革派・保守穏健派の多くが失格となった。イランメディアの報道を総合すると、保守強硬派は議席の過半数を獲得。2016年の選挙で躍進した、改革派・保守穏健派は大幅に議席を減らしたとみられる。当選に必要な得票数に満たなかった議席は4月17日の第2回投票で選出される〉(2月23日付「朝日新聞デジタル」)。

米軍によるソレイマニ司令官の殺害がイラン国民の反米感情を強めたことは間違いない。しかし、投票率が前回選挙より約19.4ポイントも下がったということは、ソレイマニ殺害が国民の政治意識の活性化にはつながっていないことを示している。〈投票行動を通じた変化に特に失望しているのが女性や若者だ。テヘランのカフェで投票所に行かず昼食をとっていた22歳の男性は「投票しても何も変わらないし変えられない。『イラン・イスラム共和国』の国名から“共和”の文字を取るべきだ」と、名ばかりとなった選挙を批判した〉(2月23日付「日本経済新聞電子版」)。このような政治的無力感がイラン社会に広がっている。