大阪大学大学院 経済学研究科教授 延岡健太郎(のべおか・けんたろう)1959年生まれ、広島県出身。81年に大阪大学工学部精密工業科卒業後、マツダ入社。米マサチューセッツ工科大学にて93年Ph.D.(経営学)取得。神戸大学経済経営研究所教授、一橋大学イノベーション研究センター教授などを経て2018年10月から現職。著書に『価値づくり経営の論理』など。

自動車産業は100年に一度の変革期にある。そのキーワードはネット接続(Connected)、自動運転(Autonomous)、カーシェアリング(Shared)、電動化(Electric)の頭文字を取りCASEと呼ばれ、迅速な対応が求められている。ただ一方で、マスコミ報道などにあおられた過剰反応もよくない。何が正しいのかを冷静に考える必要がある。

電気自動車(EV)を例に考えてみよう。トヨタ自動車を含めて日本勢はEV化で世界に遅れているとたたかれてきた。報道の過熱ぶりからは、10年後に販売される自動車の多くがEVになるのではと感じるほどだ。しかしデータを冷静に見ると、2030年に売られる自動車の9割近くはエンジンを搭載しているだろう。エンジンに電池・モーターが加わった多様なハイブリッド車は増えるが、純粋なEVは急速には増えない。

確かに米テスラは人気がある。ノルウェーなど一部の国では普及も速い。しかし実際には、EVの増加は遅く、19年の実績でも世界でEVは自動車販売の2%程度(約200万台)。日本では1%にも遠く及ばない。