1月11日号の前回に続き、メモの技法について述べる。筆者が駆け出し外交官だった時代に、メモの難易度は状況によってかなり異なることを痛感した。難易度の低い順に記す。

最も低いのが、ソ連(ロシア)外務省の職員と仕事で話をするときだ。外交の世界ではさまざまな通報をすることがある。そういうときは、各国の外務省がその国に駐在する外交官を呼びつける。事態の深刻さによって、担当者のレベルが異なる。東京を例に取ろう。

重要度がそれほど高くない場合は、外務本省の課長補佐レベル以下(入省したばかりの事務官のときもある)の担当官が電話で連絡する。少し重要度が高くなると、課長補佐が大使館の書記官を呼び出す。それより高いレベルの連絡になると首席事務官(外務省独自の役職で、ほかの中央省府では筆頭課長補佐に相当)が、大使館の参事官を呼び出す。

高いレベルの連絡になると、局長が大使を呼び出す。通常の外交案件では、この枠組みで連絡がなされる。まれに外務大臣が大使を呼び出すことがある。これは国家の強い意志を示す場合で、通常は抗議だ。こういう場合は、深夜でも早朝でも呼び出しが行われる。

これらの外交上の連絡の場合、メモは取りやすい。相手に正確に意思を伝えなくてはならないので、ゆっくり伝達するからだ。相手の話が速くてメモを取れないようなときは、「もっとゆっくり話してください」とか「繰り返してください」と言えば、相手はそれに応じてくれる。