睡眠薬は高齢者によく処方されている。そこには大きな危険がある

高齢になれば薬の量が増えるのは仕方ない面がある。だがその薬によって、認知機能が落ち、揚げ句には廃人のような症状に追い込まれる副作用については、長い間放置されてきた。

危機感を抱いた関係学会が「危険なクスリ」を300種類挙げて注意を促したが、それでも漫然投与は続き、被害は数十万人にも及ぶかもしれない。陰に追いやられてきた高齢者医療を追っていくと、驚くべき実態が見えてきた。

まるでつくられた認知症

ベンゾジアゼピン(BZ)という薬剤の名前を聞いたことがあるだろうか。睡眠薬・抗不安薬としてよく使われる薬剤だが、医師が高齢者に処方する際に、とくに注意を要すると指摘されている。

新聞や週刊誌を読んで自由に出歩いていた高齢者が、病院にかかって薬剤を服用した途端に人が変わってしまう。記憶力や判断力が奪われるなど認知機能の低下を招く副作用の危険性がある。それだけでなく、元気がなくなって寝たきりになる過鎮静や、急に怒り出して暴言や暴力を繰り返すなどといった症状もある。家族も慌てるが、何より人生の最終章を迎えた高齢者の尊厳を奪いかねない。

海外では早くから危険性が叫ばれていたが、日本では漫然とした処方が続けられてきた。このように薬剤によって老化現象を招くことを「薬剤起因性老年症候群」と呼ぶ。この被害が数十万人に及ぶとしたら信じられるだろうか。

認知症患者への減薬に取り組む兵庫県立ひょうごこころの医療センター認知症疾患医療センター長の小田陽彦医師は、BZ系薬剤による被害を何度も経験している。