イラスト:浜畠かのう

「看護師の仕事が軽んじられている。病院がホテル代わりに使われる状態が当たり前になって、医療の仕事になっていない」。関西の病院に勤務する40代の看護師はため息をつく。

そうした問題が起きているのは、レスパイト入院(レスパイトとは一時的な休息の意味)と呼ばれる介護家族支援のための短期入院が、本来の趣旨とは違った形で使われているからだ。家族の負担軽減のための入院が、高齢者の「第二の家」として使われている。単なるホテルであるかのように──。

病院側は収入につながるため、むしろ大歓迎だ。「自費の差額ベッド代がかかる個室を使ってくれる人もおり、儲けになる」と先の看護師。しかも、こうした入院患者は、医療的な対応はほとんど必要ない。医師が「気管支炎」や「脱水」など、当たり障りのない軽症の病名を付けておけばよいのだ。患者側も慣れたもので、看護師に対しホテルの従業員であるかのように接してくる。看護師にとっては、よく言えば「手間がかからない」、悪く言えば「誇りを持てない」仕事が押し付けられる。

おかしな状況が広がる背景にあるのは、病院の空床が増えていることだ。日本の主要な病院では入院費は1日の単価に入院日数を掛けて算出され(DPCと呼ばれる)、入院期間が長引くと1日の入院費が段階的に減るようになっている。このため多くの病院は患者を早々に退院させる方針をとっている。しかし、入院患者が次々と来なければ収入が減り、病院経営は悪化してしまう。実際、下図のように、日本の病床利用率は低下傾向だ。1990年代には80%を超えていた利用率は、直近では75%まで下がっている。病床をいかに埋めるかは経営上の課題だ。