慶応義塾大学経済学部教授 太田聰一(おおた・そういち)1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が猛威を振るっている。2月3日時点で、中国では1.7万人超の患者が発生し、日本国内での感染も確認された。政府はチャーター機による武漢在住邦人の帰国支援など対応に追われている。

急ピッチな対応が求められているのは、日本企業も同様だ。中国に進出する自動車メーカー2社は、中国における工場の操業停止を決めた。一方、日本国内での企業の対応は初動段階にすぎないが、GMOインターネットグループは他社に先駆けて観光客が多く集まる渋谷・大阪・福岡エリアの拠点で2週間をメドに従業員を在宅勤務させるなどの対策を発表した。この事例を参考に企業の感染症対策のあり方を考えたい。

突発的に生じる大地震などの災害では、企業は生じた被害に応じて対応を取るしかない。しかし、新型肺炎のような感染症の場合には、その感染力や毒性が事前にはわからない中で、予防のための措置を講じなければならないという難しさがある。完全な安全を求めると長期間、職場閉鎖をしなければならず、そうなれば企業にとって大きな損失が発生し、事業の継続すらおぼつかなくなる。これは従業員にも望ましいことではない。