もうり・よしたか 1963年生まれ。京都大学卒業、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジPh.D.(社会学)。九州大学助教授などを経て現在、東京芸術大学大学院国際芸術創造研究科教授。専門は社会学、文化研究/メディア研究。著書に『文化=政治』『ポピュラー音楽と資本主義』など。(撮影:梅谷秀司)
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落札直後の作品が額縁の中のシュレッダーで裁断される仕掛けで世界中を驚かせ、東京・日の出埠頭でその筆とされるねずみのグラフィティ(落書き)が見つかって知名度が急上昇した、正体不詳のストリートアーティスト、バンクシー。ただ、日本で知られていなかっただけで、欧米ではすでにポップ・アイコンだ。

──いつ頃から注目を?

1994〜99年、2003〜04年に英国にいて、90年代末にはバンクシーのグラフィティを見かけていました。はっきりと意識したのは、イラク戦争に反対するメッセージを出した03年です。同じ頃、美術館、博物館に自らの作品をあたかも展示物のように置いてくる活動で新聞に取り上げられ、私同様、多くの英国人も彼を知ることになったと思います。ビルの外壁などにスプレー缶で文字を書くグラフィティは基本的に犯罪ですから、書く人は匿名。彼もグラフィティライターでしたが、00年代初頭に、絵や立体物をいろんな媒体で街に仕掛けるストリートアーティストになりました。

──なぜそう言えるのでしょう。

戦争反対、反資本主義などの政治的メッセージを出し始めると同時に、型紙を使ったステンシルという手法を採用し、黒と白でクールな表現をするようになった。つまり、洗練された方法で、一般人が関心を持つテーマを打ち出したのです。実際、90年代の英国文化のスターは、オアシス、ブラー、デミアン・ハースト。00年代は誰かというとバンクシーです。

──英国ならではという感じも。

ユーモアのセンスは皮肉っぽいというかブラック。シュレッダー事件は、英国で人気の「Mr.ビーン」並みに子供じみている。英国でなければ出てこない才能でしょう。