ヴェルディ(1813〜1901)のオペラ『椿姫(つばきひめ)』が今月、相次いで上演される。プッチーニ(1858〜1924)の『トスカ』、ビゼー(1838〜75)の『カルメン』と並ぶオペラ屈指の人気作品『椿姫』。原題は『ラ・トラヴィアータ』、“道を踏み外した女”という意味の、永遠のラブストーリーだ。

アルフォンス・ミュシャの「『椿姫』のためのポスター」(1896年、舞台版『椿姫』のために制作された)(アフロ)

これら3作品に共通するのが、強い意志を持つ魅力的なヒロインと、線の細い“やわ”な恋人が登場し、純愛、嫉妬、裏切りなどお約束の恋愛沙汰の結果、ヒロインが最後に死ぬという、某サスペンス劇場ばりのストーリー。これがオペラ成功の方程式かと思うとドン引きしそうだが、ドロドロのストーリーに、すばらしい音楽をまぶして楽しむことこそがオペラの醍醐味(だいごみ)だ。高尚でとっつきにくいと思われがちなオペラが、実は誰もが楽しめる大衆芸術の極致だといわれるゆえんだろう。そして『椿姫』は、この方程式のお手本だ。

アレクサンドル・デュマ・フィス(1824〜95)の小説が原作で、19世紀中頃のパリを舞台にした、高級娼婦の悲しい恋の物語。ヒロイン・ヴィオレッタと、彼女を崇拝する良家の子息アルフレードの恋は、息子を心配するアルフレードの父親ジェルモンの出現で大きな変化を遂げていく。

登場人物はこの3人を押さえておけばOKというわかりやすさと、「乾杯の歌」を含むあまりにも美しい音楽で、『椿姫』はオペラ史上屈指の名作へと上り詰めた。ヴィオレッタは “道を踏み外した女”だったのか、“娼婦としての道を誤った女”だったのか。それを確認できるステージが目前だ。