おおくら・ゆきひろ 1972年生まれ。新聞社、広告制作会社勤務などを経て、フリーランスのライター。著書に戦前、戦後のマナー、モラルの変遷を描いた『「昔はよかった」と言うけれど』『「衣食足りて礼節を知る」は誤りか』、共編著に『レイラ・ザーナ——クルド人女性国会議員の闘い』。(撮影:梅谷秀司)

 

100年前から見た21世紀の日本: 大正人からのメッセージ
100年前から見た21世紀の日本: 大正人からのメッセージ(大倉幸宏 著/新評論/2000円+税/250ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
メリハリのない仕事ぶり、教師や役人の長時間労働、政治家の質低下、教師の体罰、新聞への批判、なりすまし詐欺、若者の読書離れ──。いずれもここ数年メディアで取り上げられている社会問題だが、大正期、すでに指摘され、朝野を挙げて議論されていたものもある。100年前の視座から何が見えてくるのか。

──その類似性に驚きますが、どうやって気づいたのですか。

もともと昔の新聞なんかを読むのが好きで、よくいわれる「昔はよかった」と事実とのギャップを感じていました。戦前のマナー、モラルをテーマにした本を書く際、最初は分野を定めずに幅広く資料を集めたところ、現在と同じような議論があるとわかりました。例えば、1915(大正4)年に東京の小学校で教員が3年生の児童に体罰を振るい負傷させました。親が告訴し裁判で争われましたが、並行して、現場の教師、元文部官僚から歌人の与謝野晶子まで、さまざまな人が体罰肯定、否定の意見を述べるといった具合です。

──なぜ大正期なのでしょう。

大震災の発生やバブル景気後の長期不況など個々の事象が似ているというより、歴史の流れに類似性があると思います。幕末維新の「混乱期」、明治の「発展期」を過ごして大正は「安定期」。昭和以降は、太平洋戦争と戦後しばらくが混乱期、高度成長が発展期で、平成が安定期です。

混乱期、発展期は社会的な大目標があるので、ささいな事象は問題視されない。が、安定期になるとそうした事象が気になってきて、改善への動きが起きる。同時に、混乱期、発展期を経験した世代は安定期を享受する世代にふがいなさなどを覚えます。