週刊東洋経済 2020年2/1号
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(注)画像はハザードマップポータルサイト「重ねるハザードマップ」の洪水、津波、土砂災害の各リスク情報を選択した状態 (出所)ハザードマップポータルサイト

「耐震化にかけるお金はありません」

千葉県銚子市の市庁舎は耐震基準を満たしていない。だが、市の担当者はそう語るしかなかった。

銚子市の財政は人口減少や学校関連の整備費の膨張で急速に悪化。このままいけば、2021年度に財政健全化団体、22年度には北海道夕張市と同じ財政再生団体に転落する可能性がある。市は8階建ての市役所のうち、倒壊危険性の高い6〜8階の使用を中止。避難訓練で何とか職員や来庁者の安全性を図る計画を立てる。

直面する4つの問題

銚子市は特殊な自治体ではない。日本全体で庁舎の耐震化の方針が決まっていない自治体は約117。理由の大半が財政難だ。

日本の人口は08年をピークに減少へ転じた。庁舎ですら耐震化できないのに、今後は公共施設や水道など多くのインフラの更新が待ち受けている。財源は足りない。

もう1つ懸念されるのが災害の激甚化だ。昨年10月の台風19号は首都圏がいかに災害に脆弱か思い起こさせた。地球温暖化が進めば洪水発生頻度は上がる。さらに、首都直下型地震が今後30年間で起きる確率は70%にも及ぶ。

11年の東日本大震災では20年度までに復旧・復興へ合計32兆円が投入される。インフラ系の復興はメドがついたが、東北3県の人口減少に歯止めがかかっていない。

インフラ問題に詳しい東京都市大学の宇都正哲教授は「インフラ老朽化と人口減少が合わさっており、復旧・復興問題が深刻化している」と指摘する。

こうした人口減少、インフラの老朽化、財政難、災害の激甚化という、絡み合った4つの問題に向き合うためには、より安全な場所へ移り住み、インフラを効率的に使うしかない。実際、政策も徐々にそうした方向に動いている。

政府は自治体に、住宅や都市機能を誘導するエリアを策定するよう求め、土砂災害防止法などでは災害リスクの高いエリアでの実質的な居住制限をかけ始めた。また、老朽化した公共施設やインフラについて、今後も維持更新できるのか、計画を公表するよう求めてもいる。憲法で保障された財産権があるため「住むな」とは言わないまでも、「住んでほしくない」というメッセージを徐々に出し始めているのだ。

4つの課題に日本はどう向き合うのか。まずは地方自治体の現実から見ていこう。

(本誌 松浦 大)

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