カルロス・ゴーン氏の弁護団は昨年12月に田中亘教授の研究室に訪れたという(記者撮影)
世界中のメディアを集め、1月8日にレバノンで開いた記者会見の場で、カルロス・ゴーン被告はある人物の名前を口にした。「東京大学のタナカ先生が『逮捕・起訴したことは日本として残念だ。非常に恥ずかしい』と言っている」ーー。この「タナカ先生」とは、会社法の専門家で東京大学社会科学研究所の田中亘教授である。
日産の西川廣人元社長はゴーン会見の受け止めを聞かれて、「受け止めというか、あの程度なら日本で話をすればいい話」と言った。新しい話は何もなかったとも指摘したが、田中教授が「恥ずかしい」と語ったという事実は、法律専門家の間で反響を呼んでいる。ゴーン会見の翌日、田中教授に真意を聞いた。


――1月8日のレバノンでの記者会見で、「会社法の専門家である東京大学のタナカ先生が『違法ではないことで逮捕・起訴したことは残念だ。非常に恥ずかしい』と言っている」というゴーン氏の発言がありました。「タナカ先生」とは、田中教授のことですね。

そうです。

――実際にゴーン氏と会って話したのですか。

記者会見のゴーン氏の発言は明確ではなく誤解されているようですが、直接お会いしたわけではありません。弁護団と会いました。2019年12月11日のことです。

――本郷にある田中教授のこの研究室に来たのですね。その目的は。

事件について相談されました。

――田中教授は専門家の立場から裁判所に提出するための被告側の意見書を書いたのですか。

意見書を書いてはいません。(密出国が明らかになった後)弁護士からメールが来て、このまま公判は停止になるだろうということなので、意見書を書く話は”流れた”と思っています。

――意見書を書く予定でしたか?

検討はしていました。

被疑事実の中で有価証券報告書の不実記載は根拠が薄弱

――ゴーン氏は記者会見で、田中教授が逮捕・起訴について「残念だ」「恥ずかしい」と言っていたと。実際にそう言ったのですか。

ゴーン弁護団に「恥ずかしい」という言葉を使ったことは事実です。この言葉を使ったのは、被疑事実のうち、少なくとも有価証券報告書の不実記載(報酬不開示)については、根拠が薄弱であるにも関わらず、検察がゴーン氏を逮捕し、130日間も拘束したことについて、日本の刑事司法システムに対する批判の意味も込めて、「今回の事件は日本にとって恥ずかしいことだと思う」と申し上げたものです。