私が最初に女川(おながわ)町を訪れたのは今から51年前、1969年の夏のことだった。宮城県で育った私の父親は夏休みになると実家に帰省。釣りが好きだった父親は、親戚のおじさんの先導で私を連れてこの街にアイナメ(土地の呼び名で「ネウ」という)を釣りにやってきたのだった。

港から船を出し、魚の宝庫といわれる好漁場、金華山沖に向かう。釣り上がるアイナメは、関東では見たこともないような大型のものばかり。だが、外洋のきつい波のうねりで船酔いした私は竿を上げたまま眠りこけてしまった。

「おいおい、せっかく来たんだから、仕掛けくらい降ろしてみなよ」。父親の一言に、気持ちが悪いのに耐えながら重りを海に沈める。そこで船頭から合図。「場所変えるから竿上げな」。