地形の思想史(原 武史 著/KADOKAWA/1800円+税/269ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] はら・たけし 1962年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。東京社会部記者として昭和天皇の最晩年を取材する。東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授、明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。

高畠通敏の『地方の王国』といえば、地方政治研究の重要古典である。高畠は政治学者でありながらジャーナリストのように地方に足を運び、戦後の保守政治を支えた日本各地の保守王国の実態に迫るルポルタージュを書き上げた。

なぜ田中角栄は旧新潟3区で圧倒的な強さを誇ったのか。高畠はその要因の1つに「豪雪」を挙げる。日本海から吹く湿気を含んだ季節風は、三国山脈を越える前に3~6メートルにも達する雪を落とし、人々を孤立した空間に閉じ込める。長年にわたる雪国の生活の中で培われた忍耐と恨みの感情、そして連帯意識が、有権者のエートス(生活感情)になっていると高畠は書いた。

日本は多種多様な地形からなる国家である。山々には無数の峠があり、山から駆け下りる急流は河岸段丘や扇状地をつくる。入り組んだ海岸線は世界で6番目に長く、島の数は世界で3番目に多い。このようなバラエティーに富んだ地形は、その土地に暮らす人々の思想にも影響を与えているはずだ。