2019年12月5日、政府支出だけで9兆円を超える大型の経済対策が発表された。すでに対GDP(国内総生産)比が200%を超える巨額の政府債務をどうするかという難題はあるものの、さまざまな金融緩和策が打ち出されていた5年前と比べて、経済政策の力点は金融政策から財政政策へと移りつつあるようだ。

この傾向は最近の経済学の議論の方向性ともおおむね整合的といえるだろう。昨年話題になったのは、IMF(国際通貨基金)の前チーフエコノミストであるオリビエ・ブランシャール氏が、米国経済学会の基調講演で発表した論文だ。

金利が経済成長率を下回っている経済では、政府債務の「コスト」は従来考えられていたより小さく、財政拡大の余地がその分大きくなる可能性があるという。ブランシャール氏は、金利が成長率を下回ると政府債務に関わる3つのコストが低下すると主張する。

ここでは政策論でとくに重要視される財政コストに注目しよう。ブランシャール氏は、利払い費が減少することで、債務を維持する財政コストが低下し、財政拡大が比較的容易になると指摘している。

われわれは、「政府債務を増やすのは政府の税収が支出を賄いきれなくなったときのプライマリーバランス赤字であり、逆に政府がプライマリーバランス黒字であれば債務は減る」と考えがちだ。