株式上場は2018年6月。そこからの競争環境の変化をどうとらえているのか(撮影:今井康一)
大きな注目を浴びた株式上場から1年半。メルカリは基幹のフリーマーケットアプリ事業のテコ入れ、スマートフォン決済事業の育成という両面で正念場を迎えている。国内のネット業界を見渡すと、ヤフー・LINEの経営統合発表によって競争環境が激変しつつあるからだ。そうした中、メルカリは自分たちの立ち位置をどう築いていくのだろうか。山田進太郎CEOに聞いた。
※本記事は週刊東洋経済12月28日-1月4日の新春合併特大号に掲載したインタビューの拡大版です。

 

――メルカリにとって上場2年目となる2019年は、「勝負の年」とも表現されていました。

いちばん大きかったのは決済サービス「メルペイ」の立ち上げだ(19年2月から開始)。利用者数の伸びは想定より早い。他社の「〇〇ペイ」サービスも次々と出て、それぞれの還元キャンペーンで市場が温まり、国全体でキャッシュレスが進んだのが大きかった。

当初は「メルカリで得た売り上げ金を(銀行口座を介さず)すぐに使えるようになれば便利だよね」という発想で始まったプロジェクトだった。今は決済データを活用した新しいビジネスの可能性も広がっている。

メルペイがあることで一次流通(新品販売)のメーカーや小売り各社との接点ができた。そのつながりを生かして、二次流通(フリマでの中古品販売)の情報をメーカーにフィードバックする仕組みを作りたい。例えば衣料品ブランドに対しては、需要予測や価格設定に役立つ情報を提供することで、大量廃棄を減らすきっかけを作れるだろう。2020年はそうした取り組みがすごく進展させられると思っている。

――アメリカ版のメルカリ(フリマ)事業も、先行投資が続いています。

アメリカではシリコンバレーにオフィスを構える(写真は2018年6月撮影)。

今は月間流通総額で100百万ドル(約110億円)というのが目標で、それに向け順調に成長している(現状は推定30~40億円)。

そこを超えてくると安定的に収益を出せるメドが立つ。もちろんそれは通過点で、なるべく早く実現したい。現地では2018年の終わりから「こんまり」のドキュメンタリーがブームになって、不要品を溜め込むことへの問題意識が生まれている。今年は環境問題への関心の高まりも追い風だ。

とはいえ、米国版メルカリの利用者はまだ250万人程度。人口規模を考えれば「知る人ぞ知るアプリ」で、メインストリームになっていくにはジャンプアップが必要だ。一度使ってくれた利用者の継続率は昔からすごく高い一方、そもそも「知ってもらう」ところには難しさを感じている。米国には世界中からいろいろなサービス、企業が来ている。加えてチャネルが細分化しているため、広告宣伝の費用対効果が最も悪いマーケットだ。

それでも米国で利用が広がれば、残りの世界への挑戦切符を手に入れることができる。どこかで「勝負どころ」を見極めなければならない。現地では街頭の看板やラジオ、ネット広告などいろいろな手を試している。メディアとのリレーションもだんだん深まり、ニュースで取り上げられることも増えた。今後も効果的なPR・マーケティング手法を探していく。

決済サービスでやるべきことは「微調整」

――国内ネット業界ではヤフーとLINEの経営統合が話題です。どう見ていますか。

いろいろなやり方があっていいと思う。ヤフーとLINEのように、統合で規模を追求するのは1つの戦い方だけど、やっぱり、いいサービスをつくって利用者の支持を得るのが王道のやり方だろう。  

例えばフェイスブックはGAFAの中でも若い会社だけど、グーグルのSNS「グーグルプラス」などに負けず勝ち残った。これはユーザーコミュニティーへの深い知見に裏打ちされたサービス開発があったからだ。今後も、ごく小規模な会社から次のジャイアントが生まれる可能性は十分ある。

2019年3月、LINEペイとメルペイは共同で記者会見を開き業務提携を発表。加盟店開拓に「Mobile Payment Alliance」を設立したが…(撮影:風間仁一郎)

――複数社で一緒にになったほうが効率化できたり、規模を拡大したほうが有利になったりすることもあるかと思います。メルカリにとっても、それは手段の一つですか。

それはそうだ。今までも、メルペイでは「オープンネス」戦略で、いろいろな会社と組みながらサービスを拡大してきた。

LINEとも連携を深めてきたので、これからどうするかという協議は行っている(編集部注:インタビューは12月6日。同月19日、LINEペイ、メルペイ、d払い〈NTTドコモ〉、auPAY〈KDDI〉の4社で締結していた加盟店開拓アライアンス「Mobile Payment Alliance(MoPA)」の活動終了が発表された)。ただ、これがメルカリの戦略の根幹を揺るがすことはない。

他社がどうなろうが、メルカリ、メルペイの顧客は着実に増やせている。収益性を改善できそうな策もいくつか考えているので、それらをしっかり遂行していくことが最もプライオリティの高い事項だ。

確かに決済においてLINEと一緒にやってきたことは大きかったが、それが前提という事業ではないし、これからやらなければならないことは「微調整」程度だと思っている。

──しかしながら、人材の厚みや資金力の差に限界は感じませんか。  

人材も資金も、多ければいいというわけではない。重要なのはどこにフォーカスして開発を行うかだ。

われわれには「R4D」という研究開発特化の部隊がある一方で、アプリへの実装に近いところに集中しているチームもいる。アプリで蓄積してきた生のデータから利用動向を観察し、仮説を立て実装し、また修正する。そういう鍛錬の中で、サービスに役立つ技術の見極め力、開発力はそれなりに身に付けてきた。

他社や研究機関との提携も重視している。日本は大学や産総研の層が厚い。メルカリではメーカーの研究開発部門と一緒に進めている取り組みもある。自分たちだけでは限界があるかもしれないけど、どこかと一緒に取り組んだ研究から、もしかするとグーグルやフェイスブックにはない新しいテクノロジーが見つかるかもしれない。体力がない会社なりの戦い方を追究していく。

自分の力の配分は「週単位」で変えていく

――2019年9月には経営体制を刷新し、小泉文明社長が会長となり、山田さんが会長から社長に復帰しました。どんな意味があるのでしょうか。