実体験と豊富な聞き取り、彼らはいかに稼ぎ間違うか
評者/ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン顧問 高橋 誠

『ヘッジファンドのアクティブ投資戦略 効率的に非効率な市場』ラッセ・ヘジェ・ペデルセン 著/内山朋規、角間和男、浦壁厚郎 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

[Profile]Lasse Heje Pedersen 2001年に米スタンフォード大学経営大学院で博士号取得。専門は流動性リスクや取引戦略。06年にヘッジファンドAQRでコンサルタントとして活動開始。現在、ニューヨーク大学、コペンハーゲン・ビジネススクールで教授を務め、AQRのプリンシパルとして研究成果を応用。

邦訳では副題にある原タイトル「Efficiently Inefficient(効率的に非効率)」は魅力的な言い回しだ。

大学でファイナンスを教える著者は、実際に大手ヘッジファンドに身を置いてさまざまな投資戦略を実践した結果、理論的には効率的だが現実には非効率な市場と出合う。

理論はいろいろな前提条件の下で構築されるが、現実の市場はそうした前提を満たさない。事実、市場が非効率でなければ、取引コスト控除後に超過利潤を得られない。

本書の構成は、第Ⅰ部でヘッジファンドの概論として、運用成績の評価、市場からの収益化、リスク管理などが説明される。さらに資金調達の項目では、レバレッジについて証拠金請求によるその限界などの実務上の指摘に加え、危機に陥った時に流動性スパイラルが生じる過程を2007~08年時を例に体験者ならではの解説がなされる。今後の危機の際に参考になろう。

第Ⅱ部以降でヘッジファンドの主要な、いずれも著者が直接関わった8つの戦略が詳述される。株式戦略では、代表的なロング・ショート戦略に加え、ショートバイアス戦略にも要注目。通常はロングポジションでリスクプレミアムを取るが、それに歯向かう形で株式を借り空売りをするわけで、人一倍強い信念が要求される。運用者のスキルが集約的に発揮される戦略だ。

8つの戦略の代表的なマネージャーへのインタビューが本書をより興味深くしている。