薄毛の男性に朗報だ。再生医療の技術を用いて、ふさふさの髪を復活させるための臨床研究が間もなくスタートする。体の器官の再生医療としては世界初になる。頭皮から採取した毛髪のもとになる細胞を培養し、大量に増やした毛包(毛穴の奥にある毛根を包む、髪を作り出す器官組織)を移植する。

いわゆる育毛剤とは異なり、最先端の再生医療による新しいアプローチだ。率いる辻孝(つじ・たかし)は、理化学研究所(理研)の生命機能科学研究センター(神戸市)で器官誘導研究チームのリーダーを務める。

ファッションにこだわり、弁舌もさわやか。ビジネスマンさながらに毎週のように東京出張をこなす(撮影:ヒラオカスタジオ)

再生医療の実用化の壁を越えようと国内外で研究者たちがしのぎを削る中、辻の研究は広く応用できる可能性があり注目を集める。

辻が異色なのは、研究者が憧れる理研のチームリーダーでありながら、学界の主流を歩んできたわけではないことだ。地方の国立大出身で、海外留学の経験もない。

製薬会社の研究員を辞め、大学院博士課程に進学したが挫折。別の製薬会社に就職するも研究していた医薬品候補が開発中止になる。しかし実績が認められ大学に転じ、さらに理研で一国一城の主になった。紆余曲折の研究者人生だ。