最低賃金の上昇が続いている。2019年度の額面は06年度と比べて、全国平均で約34%上昇した。この間、物価はあまり上がっていないため、労働市場に大きな変化が起こっていることがうかがえる。

最低賃金の引き上げは、低賃金労働者の貧困対策としての役割が期待される一方で、経営者にとっては悩ましい政策でもある。増加した分の人件費負担をどうやって工面するか、考えなければならないからだ。

企業の負担を補うために労働者の雇い止めが行われたり、福利厚生費が削られたりしては、本来の政策目的に反して労働者は苦しむことになる。企業の対応次第で、最低賃金制度が再分配政策として機能するかが問われるのだ。

一方で、最低賃金の上昇で労働者のモチベーションが高まり、経営者の創意工夫も刺激できれば、企業の売り上げはむしろ伸びる可能性がある。伸びた売り上げが人件費の上昇分を相殺するならば、企業は雇用量を削減して生産規模を縮小する必要もなくなる。近年は、このような生産性に着目した研究も進められている。

実際に大規模な企業データを用いて行われた、最新の研究を紹介しよう。加モントリオール大学の研究者らは、全米に約2000店舗を展開する小売りチェーンで働く従業員の販売成績データを使い、最低賃金の上昇が労働者の生産性に与える影響を分析している。