大阪大学大学院 経済学研究科教授 延岡健太郎(のべおか・けんたろう)1959年生まれ、広島県出身。81年に大阪大学工学部精密工業科卒業後、マツダ入社。米マサチューセッツ工科大学にて93年Ph.D.(経営学)取得。神戸大学経済経営研究所教授、一橋大学イノベーション研究センター教授などを経て2018年10月から現職。著書に『価値づくり経営の論理』など。

モノからコトへといわれて久しい。モノより経験価値に焦点を合わせた「デザイン思考」が世界で注目されて20年近く経つ。導入が遅れた日本では一昨年、経済産業省が「デザイン経営」の推進を掲げた。企業は機能的価値以上に、使いやすさやデザインなどの意味的価値の重視を唱えている。

しかし実際には、日本企業の経営も商品もあまり変わっていない。例えば電子レンジは、膨大な種類の料理が可能でも、マニュアルをじっくり見ないと使えない。量販店に並ぶ冷蔵庫や洗濯機は、デザイン重視のはずだが、少し離れるとメーカーの違いもわからない。

日本企業は数字や仕様で表せない意味的価値の創出が苦手だ。重量半減化など具体的な目標を組織一丸となって達成する力は世界一だ。しかし、英ダイソンの掃除機や米アップルのiPhoneの人気の源泉は、商品スペックを超えて顧客に伝わる魅力や意味である。