ベンチャー投資の機運は今、世界的にみると、曲がり角を迎えている。きっかけは、シェアオフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーが2019年9月末に上場計画を撤回したことだ。

19年の投資マネーにおいて、ソフトバンクグループ(SBG)傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)の影響力は見逃せない。米国でのベンチャー投資額が年間約7兆円という中で、同ファンドの規模は約10兆円と莫大。企業評価額10億ドル超の未上場企業「ユニコーン」を中心とした投資先の評価額は跳ね上がった。出資先ベンチャーの経営者の間では、新規株式公開(IPO)をしなくても1000億円超を調達できることから、SBGの孫正義会長兼社長にちなんで、「MASA IPO」と呼ばれている。

そんな孫氏がとりわけ目をかけたのがウィーだ。SBGはSVFを含めて、ウィーに累計約100億ドルを出資。19年1月の追加出資後は、企業価値が470億ドルとされた。「サブスクリプション」や「シェアリングエコノミー」、「不動産テック」など、ベンチャー投資かいわいでははやり言葉が横行する。そんな中で、ウィーの創業者であるアダム・ニューマンCEOのプレゼンテーションの迫力に圧倒される人は少なくなかった。

孫正義氏はウィーカンパニーに多額の投資をしたが…(撮影:今井康一)

だが、口のうまさはビジネスモデルの良しあしと関係がない。ウィーが19年8月に公表した上場目論見書には、創業者のビジョンに関する記述が多く、収益の源泉となるビジネスモデルへの言及は少なかった。テクノロジー活用の可能性も見えず、「そもそもウィーはテクノロジー企業なのか。単なる不動産屋ではないか」との見方も高まっていた。