しらふで生きる 大酒飲みの決断(町田 康 著/幻冬舎/1500円+税/219ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] まちだ・こう/1962年大阪府生まれ。作家、ミュージシャン。高校時代から町田町蔵の名で歌手活動を始め、81年パンクバンド「INU」でデビュー。小説「くっすん大黒」で97年Bunkamuraドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞受賞。2000年「きれぎれ」で芥川賞受賞。

30年間毎日欠かさずに酒を飲み続けてきた作家、町田康の断酒エッセーである。こう書くと酒をやめて健康になった暮らしぶりを健やかにつづったエッセーを想像してしまうが、決してそんな生易しいものではない。

その証左としてまずは目次からいくつかの見出しを引用してみよう。〈飲酒とは人生の負債である〉〈私たちに幸福になる権利はない〉〈「私は普通の人間だ」と認識しよう〉〈「普通、人生は楽しくない」と何度も言おう〉〈「自分は普通以下のアホ」なのだから〉と畳みかけてくる。目次の時点で強烈なジャブを食らわされる。

そもそも著者はなぜ酒をやめると決断したのだろうか。何しろ自他共に認める大酒飲みで、古代の政治家・歌人・酒飲みである大伴旅人と、彼が詠んだ「酒を讃(ほ)むる歌十三首」のみを信じて酒を飲み続けてきたような男なのだ。当然読者が気になるであろう、この問いに対する著者の答えは「気が狂ったからである」というものだ。納得できるようなできないような。とまれ、断酒とは容易な道ではない。著者の言葉を借りれば「飲みたい、という正気と飲まないという狂気の血みどろの闘いこそが禁酒・断酒なのである」となる。