慶応義塾大学経済学部教授 太田聰一(おおた・そういち)1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

今年5月の労働施策総合推進法の改正によって、パワーハラスメント(パワハラ)対策の法制化が行われ、職場におけるパワハラ防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが企業の義務となった。

パワハラ問題は深刻化しつつある。厚生労働省が設置する総合労働相談コーナーにおける相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」によるものは年々増加傾向にあり、昨年度は全体の相談件数の約3割を占めた。厚労省による実態調査もかなり衝撃的である。2016年の調査では、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した従業員は33%に達し、その4年前の調査に比べて7%ポイントも増えた。

理不尽なパワハラは被害者の心身状態の悪化、仕事の意欲低下を招くだけでなく、企業にとっても離職者や休職者の増大などによる大きなロスを発生させる。このことは今では広く理解されるようになっており、企業も従業員向け相談窓口を設置するなどの対応を行ってきたが、さらなる対策強化のため、今回の法改正に至った。