近年、保育や幼児教育の重要性が唱えられ、行政も無償化や、待機児童の解消などに力を入れている。しかし現実は、限られた資源を奪い合うような状態だ。「1歳児からの保育・教育」など、保育や幼児教育が重要とされる年齢が低下し需要が増える一方で、保育所への入所希望の可否は家庭の状況などによって限定的に決まるからである。

保育・幼児教育の普及は、親が仕事や家事などに費やす時間の確保につながる。子供にとってはどうだろうか。ここでは、これらが子供にもたらす影響を分析したうえで、無償化や待機児童問題についても考えていきたい。

保育・幼児教育に関する研究は世の中の関心の高まりと比例し、近年急速に増えている。まずは、「保育」と「幼児教育」の違いを明確にしておきたい。「保育」とは厚生労働省の管轄で、福祉を目的とした制度である。保育所がその代表的な施設だ。一方で、「幼児教育」は文部科学省管轄の下、小学校入学前の教育を目的としたもので、幼稚園などで行われる。

制度上両者は異なるものではあるが、保育所で数字や読み書きを教えていたり、とくに最近は幼稚園が保育士を雇って部分的に保育所の役割を果たす「預かり保育」が普及したりするなど、機能的には保育所と幼稚園の区別は曖昧になっている。それを踏まえて、ここでは両者を併せて議論する。

将来の仕事にも好影響

子供を保育所・幼稚園に通わせる際の重要な指標の1つは、「子供の発達に効果的か」だ。この問題を解明しようとしたのが、米シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授らである。