まつなが・ただし 1961年生まれ。87年千葉大学医学部卒業。大学病院を中心に小児を専門として臨床、研究、教育を行う。93年医学博士。2006年から松永クリニック院長。著書多数。『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』で日本医学ジャーナリスト協会賞・大賞を受賞。(撮影:ヒダキトモコ)
大江健三郎が自らの体験を基に、障害児を持った親の葛藤と受容を描いた『個人的な体験』を発表してから半世紀以上。少子化、科学の進歩で問題は複雑化している。数多くの障害児とその家族に接してきた小児外科医は、プラス方向への変化を感じるとともに危機感も募らせている。

──受容には個人差がある?

寝たきりで言葉ができるかどうかといった重度心身障害児の場合、親が病院に寄り付かない「院内捨て子」になることが今でもまれにあります。が、同じような子でも生まれた瞬間に受容できる親もいる。また、5年、10年と時間をかけて受容する例もあります。3歩進んで2歩下がったり、突然振り出しに戻ったり。それが受容です。

──「仮の受容」と書いています。

経験的に多くの母親は障害のあるわが子の存在を最初から受け止めます。が、「なんでこの病気、この障害に」という点では納得できないことが多い。納得できたと思っても、また涙がはらはらと落ちてくる。真の受容は親が生涯を通じて成し遂げるものかもしれません。

人生経験も影響します。50年も生きていれば、人生は困難の連続で、それを乗り越えてこそ幸せになれると知っています。こう考えられれば、障害児を授かることは人生における多くの困難の1つですが、20〜30代の親は人生の終わりみたいに感じてしまう。