2年程度で前年比2%の消費者物価上昇率──。これが2013年4月に就任したばかりの黒田東彦日本銀行総裁が掲げた目標であるが、現在も達成されていない。

従来物価は上昇するものと思われてきたが、日本では00年代からたびたびデフレが生じている。なぜ物価が上昇しないのか、上昇させる手段は何か、といった議論が盛んになり、円安を利用すべきという意見もあった。しかし、「円安がどれくらい物価を上昇させるか」についての詳しい研究はそれほど多くない。そこで筆者らは、円安が物価上昇に与える影響を明らかにする研究を行った。

デフレはさまざまな問題を抱える。例えばデフレ時にモノで測った債務は実質的に大きくなるため、一般的に債権者よりも債務者が不利になる。マクロで考えると日本で最大の債務者は政府だ。物価が上がらず税収が伸びない中で、今や1000兆円を軽く超える債務を返済するのは困難である。

もちろん企業への影響もある。デフレ下では、たとえ名目の金利を下げて企業に設備投資を促そうとしても、将来的に物価が下がるなら物価が下がってから投資しようというインセンティブが働き、なかなか投資が伸びなくなる。言い換えれば、現在ゼロ金利でお金を借りて投資しても、来年の返済時には物価が下がっているので、返済額の実質的な評価は上昇する。つまり実質金利が上がるのだ。

このような問題があるため、「物価の番人」である日銀に対して、物価をどうにか上げてほしいという期待が膨らんだ。そこで日銀の取った方法の1つが「インフレーションターゲット政策」である。