週刊東洋経済 2019年11/23号
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「既存業務全体の見直しを徹底的に進め、受信料額の適正な水準を含めた受信料のあり方について、引き続き検討を行うことが必要」

11月8日、高市早苗・総務相は閣議後の記者会見でそう語った。NHKが提出したテレビ番組をインターネットで常時同時配信するための実施基準案について、監督官庁の総務省はこの日、再検討を要請。並行して3つの分野について改革を進めるべきだと強調した。

その1つが冒頭の発言にある受信料だ。総務省は「国民・視聴者にとって納得感のあるものとしていく必要があり、受信料の公平負担を徹底するほか、業務の合理化・効率化を進め、その利益を国民・視聴者に適切に還元していくといった取り組みが強く求められる」としている。

受信料収入は過去最高

「NHKの業務全体を肥大化させない」と高市氏は言う。総務省のトップがクギを刺さなければならないほど、NHKの規模は拡大している。受信料収入は5年連続で過去最高を更新し、2018年度は初めて7000億円を超えた(下図表1)。過去の利益の蓄積である剰余金(繰越剰余金と20年着工の渋谷・放送センター建て替えに向けた建設積立金の合計)は、2909億円に上っている(下図表2)。

18年度の視聴率は4位。この10年は低下傾向にあるとはいえ、2位のテレビ朝日や3位のTBSテレビとそれほど差がない(下図表3)。潤沢な資金を番組制作に投じられる強みが生きている。

規模拡大を支えるのは受信料の支払率の上昇だ。18年度末の推計支払率は81.2%と、この10年で10ポイント伸びた。「公平な負担」を掲げて受信料の徴収を積極的に進めており、テレビの設置者が契約を拒めば、法的手段も辞さない。06年から民事手続きによる支払督促の申し立てを実施。11年からは未契約世帯に対して民事訴訟にも踏み切っている。

さらに追い風も吹く。17年12月、テレビ設置者にNHKとの受信契約を義務づける放送法の規定について、最高裁判所は合憲と判断。その後、一般世帯や事業所から自主的な契約の申し出が相次いだ。

こうしたNHKの振る舞いに対する不満は大きい。それが顕在化したのが、元NHK職員の立花孝志党首率いる「NHKから国民を守る党(N国党)」の躍進だ。

「NHKをぶっ壊す!」と連呼して脚光を浴び、今年7月の参議院選挙では比例代表で90万票以上を獲得、1議席を確保した。選挙区でも得票率2%を達成し、政治資金規正法、政党助成法が定める政党要件を満たした。

当選後、立花氏は議員会館にテレビを設置し、NHKと受信契約を締結したうえで受信料不払いとすることを宣言。するとNHKは「受信料と公共放送についてご理解いただくために」という文書をウェブサイトに掲載し、「(放送法や受信規約の)明らかな違法行為などについては、放置することなく、厳しく対処してまいります」と、N国党を牽制。その翌週には営業の責任者である松原洋一理事自ら出演・説明する番組を急きょ放送するなどの対応に追われた。