一時は先行率が1万%を超えていたRIZAP(撮影:尾形文繁)

月に1社という性急な買収で増収増益を続け、絶好調に見えたRIZAPグループ。その危うさを会計評論家の細野祐二氏が指摘した際に注目を集めたのが会計利益先行率だった。

この先行率は純利益を営業キャッシュフロー(CF)で割ったものだ。キャッシュの裏付けのない利益を出し続ければ、いつかは無理がたたり、大きな赤字の原因となりうる。そのリスクを見る指標だ。5期累計で比べるのが基本だが、毎期の動きも参考になる。

RIZAPの先行率は年々上昇し、2018年3月期には何と1万%を超えていた。最終利益92億円に対して、営業CFは1億円を下回っていたのである。同社は翌19年3月期に193億円の最終赤字に転落。営業CFは104億円のマイナスとなった。

それだけではない。先行率はZOZOの異変も映していた。14年3月期に76%にすぎなかったZOZOの先行率は18年3月期には100%を突破。全上場企業の平均は約50%で同社の先行率は平均の2倍強に上っていた。結果的に19年3月期は営業減益と連結決算開始以来の増益記録が途絶えた。

一方、超優良な好業績企業も、先行率は高く出る傾向にある。製品が売れに売れ、純利益が拡大するのと同時に、近い将来の売上高増を見込み在庫の仕入れを拡大。営業CFが抑えられるからだ。

象徴的なのはキーエンスだ。17年3月期から3期連続増収増益を続け、先行率も17年3月期99%、18年3月期103%、19年3月期108%と増えている。

ただ、先行率が高いからといって、キーエンスを怪しいとみるのは早計だろう。そうした場合に役立つのが運転資金分析である。

運転資金分析も併用

運転資金分析は、直近の回転率について直近を含む過去5期平均と比べ、大きな乖離がないかを見る指標。回転率の急激な変化は、売掛金や買掛金、在庫に異常を来していることを示すからだ。

回転率では売掛債権、棚卸資産、営業資産、買掛債務、正味運転資金について、それぞれ1カ月分の売上高で割って比較する。細野氏は「直近の回転率が5期平均の10%以内」を目安としている。

この分析で見ると、キーエンスの回転率に大きな変調は見られない。したがってキーエンスの先行率の高さは、危うさの予兆でなく、優良さの裏返しといえる。

表は過去5期累計の純利益を同営業CFで割ったものだ。

1位のZホールディングスは、棚卸資産回転率のみ過去5期平均を10%以上上回るが、それ以外の回転率は正常の範囲内だった。

表の左側につけた「利益先行」「平均的」「キャッシュ先行」というのはあくまでも目安にすぎない。会計利益先行率が“いい利益先行”か“悪い利益先行”かは、運転資金分析をするなどして、慎重に見極める必要がありそうだ。

<ランキングをご覧いただくにはログインが必要です>