相次ぐ買収によって疑似資産が巨額となった武田薬品。写真はクリストフ・ウェバー社長(撮影:今井康一)

貸借対照表(BS)の左側、資産の部には、在庫や工場などの目に見える資産と、ソフトウェアなどの目に見えない資産とがある。前者が「有形資産」であり、後者は「無形資産」だ。

しかし、目に見えない資産の中には、本当に資産といえるのかどうか、疑わしいものがある。「のれん」「繰延税金資産」「無形固定資産(ソフトウェア、特許権、借地権などを除く)」「繰延資産」などである。いずれも現実の世界には実在しない資産であり、お金に換えるのが極めて難しい。あくまでも会計上の資産にすぎない。

「繰延税金資産」は将来払わなくて済みそうな税金分を計上している。が、当初の計画が狂えば、同資産を取り崩す必要が出てくる。また、「のれん」や「無形固定資産(ソフトウェア、特許権、借地権などを除く)」は、企業買収で生まれる、いわば疑似的な資産だ。

買収した企業の純資産額よりも買収金額のほうが大きい場合、その差額は会計上「超過収益力」と見なす。次に、他社をしのぐ収益力について金融工学を用いて計算し、顧客基盤に超過収益力の源泉があれば、「顧客基盤」として資産計上する。ほかに「マーケティング力」「技術力」「保有契約」などの無形資産がある。「のれん」は買収時にこうした名称がつかなかった無形資産の残額といえる。

「繰延資産」は創業費(定款作成費など)・開業費・株式交付費・社債発行費を資産計上したものだ。

買収で膨らむ疑似資産

本誌ではこれらの合計を「疑似資産」と呼び、会計評論家の細野祐二氏の助言を得て、金融・不動産を除く全上場企業の疑似資産を独自に算出した。

武田薬品工業が9兆円、ソフトバンクグループ(G)が6.9兆円──本誌独自試算の疑似資産を合計すると、この2社が突出して多い(ともに2019年3月末)。

武田薬品の疑似資産の主な内訳は、のれんが4.1兆円、換金性に乏しい無形資産が4.7兆円。同社の疑似資産は相次ぐ買収によって巨額化していたうえ、アイルランド製薬大手のシャイアーを今年1月に6兆円超で買収し、大きく膨らんでしまった。

同社の株主資本は3月末で4.8兆円。疑似資産はその1.8倍もある。仮に、のれんや無形資産の価値がなくなれば、武田薬品は債務超過に陥るおそれがある。

またソフトバンクGの疑似資産の内訳は、のれんが4.3兆円、換金性に乏しい無形資産が1.9兆円。米スプリントや英ARMの巨額買収で膨張している。

ちなみにスプリント買収で取得した、無形資産に計上されるFCC(米連邦通信委員会)ライセンスの4.1兆円は、疑似資産の計算からは除外。米国で周波数免許が売買可能であることを考慮した。

それでも同社の疑似資産は6.9兆円と、株主資本6.8兆円を上回る。のれんや無形資産の価値がなくなれば、債務超過に陥るおそれがゼロとはいい切れない。

これら2社を含め、疑似資産が兆円単位に達するのは12社。うちアサヒグループホールディングス電通も疑似資産額が株主資本額を上回っている。

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