公認会計士 田中靖浩(たなか・やすひろ)1963年生まれ。早稲田大学商学部卒。外資系コンサル会社などを経て独立。経営コンサルやセミナーも手がける。著書に『実学入門 経営がみえる会計』など。(撮影:尾形文繁)

会計の本なのに数字の話はいっさい出ず、読みやすいと評価が高い『会計の世界史』。人々の喜怒哀楽や欲望の中、いかに今日の会計ができあがったのか、物語のように描かれている。登場人物も画家や発明家、政治家などさまざまだ。著書の田中靖浩氏に本書の狙いを聞いた。

『会計の世界史』には歴史上の人物が何人も登場しわかりやすい。(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

──「簿記の原型はイタリアで生まれた」とありますが。

イタリアで簿記や銀行が生まれたと聞いて、びっくりする人が多いと思う。今では財政悪化でEU(欧州連合)のお荷物なのだから。

中世のころ地中海貿易では、儲けた商人がイタリアに多かった。商人は道中でつねに狙われる危険にさらされ、これを見た銀行が商人に為替手形取引の提供を始めた。ある銀行支店で発行した為替手形が国境を越えたり、別の通貨で引き落とされたりする。

こうして銀行の拠点商売が発展していく中で、組織全体を統合した取引記録が必要になっていった。商人側も商売拡大に伴って、記録をつけるようになり、イタリアで簿記の原型が生まれた。

──「自分のため」に行った会計がだんだん「他人のため」の会計になっていったと。