名古屋市の栄にあるZARAの店舗(写真:天空のジュピター / PIXTA)
ZARAを展開するインディテックス(本社スペイン)の売上高は約3.1兆円と、2位のH&Mの1.3倍。営業利益率に至っては、ファーストリテイリングやH&Mよりも5ポイント以上高い16.7%に達する。プレーヤーの入れ替わりが激しいファッション業界において、独走する秘密はどこにあるのか。ユニクロなど他のファストファッションブランドとの違いは何なのだろうか。
本連載「ファストファッション新時代」は11月23日号の特集としても掲載します(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

──ZARAは他社と何が違うのでしょうか。

ZARAは毎シーズン、新しいトレンドの商品を「試しやすい価格」で常に提供している。トレンドを取り入れたくても、ハイブランドは高くて手が届かない。そういった人でも、ZARAの商品は買いやすい。ワンシーズンだけ試すこともできる。

価格帯はユニクロよりも高いが、両者はコストパフォーマンスの出し方に違いがある。ユニクロは低価格かつベーシックな商品で品質の常識を変え、他社と差別化している。一方のZARAはトレンドファッションを中心とし、百貨店などで販売されるハイブランドと比べると圧倒的に安いというポジションを確立している。

売り場でも顧客が「買い足し」をしやすくなるような、理にかなったディスプレイ設計を採用している。多くの人が持っていそうなベーシックアイテムの中に、今年のトレンドをワンアイテムだけ取り入れるとしたらどうしたらよいか、という目線で商品を展示する。上から下まで全て新しいものを買わなくても、すでに持っている服の中に、どう今年のカラーを取り入れたらよいのかを提案する。

一般のアパレル店では、同じ商品を複数のカラーでずらりと並べるケースが多いが、それでは顧客は(既に持っている服と)どう組み合わせたらよいのか迷ってしまう。ZARAの店内は、あるコーナーは赤の商品、別のコーナーは緑の商品と、各コーナーのテイストやカラーが一目瞭然でわかる陳列をしている。着せ替え作業の手間が掛かるマネキンはそれほど多用していない印象があるが、ハンガーに吊るされた状態でコーディネートができている。そのため、展示の組み合わせを柔軟に変えることができる売り場になっている。

顧客にとっては、自分が持っている服とどうコーディネートすればよいのか、想像しやすい。

齊藤孝浩(さいとう たかひろ)/1965年生まれ。明治大商学部卒。総合商社やアパレルチェーン勤務の後、アパレル企業向けに在庫最適化などの経営支援を行うディマンドワークス設立(撮影:吉濱篤志)

──そもそも、なぜ需要に合ったトレンド商品を次々と投入できるのでしょうか。

ZARAの商品は、トレンドとベーシックに分けられる。ベーシックは、ユニクロのようにコストパフォーマンスを重視した定番商品で、長期間販売をする。店頭のテーブル上に大量に並べられたジーンズやニット、ラックに掛かったカラーのカーディガンなどで、売り場面積の約3分の1を使っている。

残りの3分の2が、店頭の壁側に掛かっているようなトレンドの商品だ。流行を取り入れることもあって、ベーシックと比べて当たり外れ(売れるときと、売れないとき)のリスクが大きい。そのため、コレクション(ファッションショー)やストリートファッションの動向、インフルエンサーの発信内容などあらゆるところから情報を取って商品を作るが、各シーズンの始めの投入量は約3週間分だけ。1つの商品は1色あたり20枚をワンユニットとして、「20枚×商品を投入する店舗数」が生産量となる。商品に対する顧客の反応を見ながら、どれを作り足したり、改良したりすればよいかを見極めていく。

売れた商品でも、まったく同じ商品を追加生産するケースは比較的少ないと聞く。店頭からの情報を吸い上げたうえで、少しずつ改良を加える。