10月のソウルでは、反日の雰囲気をことさら感じることはなかった。「安倍NO」と書かれた、安倍晋三政権を批判するステッカーが目につく程度だった。日本製品不買運動の影響でビールやアパレルなどの日本製品の消費が落ちているのは統計でもわかるが、ユニクロのショップや日本食レストランに客はそれなりにいた。反日の声よりもよく聞こえたのは、現在の文在寅(ムンジェイン)政権を擁護する勢力と反対する勢力が開く街頭集会でのスローガンだった。

とはいえ、日韓関係は実際に悪化している。とくに日本政府が今年7月、韓国に与えていた貿易上の優遇措置を撤廃し、半導体関連材料など一部品目の輸出手続きを変更したことにより、日韓の経済に悪影響が出てくるのではないかと心配する声は高まっている。それでも、日韓の政府からは関係を改善しようという意欲が見えてこない。

10月22日の天皇即位の礼には、韓国からは李洛淵(イナギョン)・国務総理(首相)が出席した。韓国紙の東京特派員を務め、日本語が流暢な李首相は現政権において随一の日本通だ。李首相の訪日が「関係改善に向けたシグナル」と期待する声もあったが、現実は厳しい。

元徴用工問題では、日本が納得できる具体的な提案は李首相から出されなかったようだ。2018年10月に韓国大法院(最高裁判所)が出した判決は、1965年の日韓基本条約・請求権協定という国家間の約束を破ることになり、日本は絶対に受け入れられない。早ければ今年12月に決定される可能性がある日本企業の韓国内資産の没収について、日本政府には到底容認できない行為だ。

元徴用工判決は日本による植民地支配の結果であり、韓国の主張を無条件で受け入れよというのが韓国国民に共通する考えだ。だが、日本政府にしてみれば、国家間で結ばれた条約に「補償済み」とあることは守られなければならない。だからこそ、判決直後から今年春にかけて、日本政府は韓国側に解決策を提案し、問題の軟着陸を図ろうとしてきた。請求権協定に明記されている調停委員会の設置を提案するなど奔走してきたのも事実だ。だが、文大統領は「韓国は三権分立の国であり、司法の判断は尊重されるべきだ」とし、事実上、日本側に具体的な提案をしてこなかった。