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「一審でひどい判決を出した民事8部は猛省すべきだ」 会社法の専門家が指摘するアドバネクス裁判の問題点

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「今回の係争について裁判所は1週間で判断を下せたはず」と指摘した田中亘教授

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2018年6月、アドバネクスの株主総会で株主が出した修正動議により、加藤雄一・元会長ら4人の取締役が事実上解任されるという前代未聞の事件が起きた。創業家の加藤元会長らが、2018年の株主総会の不存在や決議取り消しを求めた訴訟で、二審判決が出たのは10月17日のことだった。
二審判決で注目すべきは、加藤元会長らが2018年の株主総会で取締役に再任されていたと認定したこと(一審は認めず)。原告の実質勝訴というべき内容だった。ところが、加藤元会長らの任期は2019年6月の株主総会までであり、現時点で「訴えの利益がない」(訴訟に勝っても得るものがない)として、原告らの訴えを却下・棄却した。
二審で原告側は、会社法を専門とする田中亘・東京大学社会科学研究所教授の意見書を提出している。一連の結果について、田中教授は「将来、会社法の教材に載るような重要な事件」と指摘する。
アドバネクス事件には会社法に関連する論点がいくつもある。株主総会担当者や機関投資家にとって今回の騒動は人ごとではない。二審判決を受けて田中教授に聞いた。

 

――二審判決では、訴訟費用は一審、二審とも原告がすべて負担することになりました。

原告の訴え(2018年の株主総会の不存在や決議取り消し、取締役としての地位確認請求など)がすべて却下または棄却されたから、機械的に考えるとそうなる。一審では一部勝っていたのに、二審ではすべて負けたので訴訟費用を負担するわけだが、確かに(すべての負担は)厳しい。

二審の判決文を読むと実質的には原告勝訴に近い。総会決議の瑕疵(不備)として原告が主張している部分は、二審で全部認められているからだ。2018年6月の70期総会は、原告が言っているとおり瑕疵があった。

瑕疵があったのになぜ原告が救済されない(取締役としての地位確認が認められない)のかというと、すぐに判決が出なかったからだ。二審の判決が出るまでに、昨年の総会決議から1年以上かかっている。

1週間で判断が下せたはず

――取締役の任期が1年に短縮する会社が増えた中で、裁判に1年以上かかっていると、今回のように、当時は取締役だったことが判明してもすでに次の総会で別の取締役が選ばれており、「訴えの利益がない」(訴訟に勝っても得るものがない)となってしまいます。

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