(撮影:今井康一)

自動車産業は100年に1度の大変革を迎え、トヨタ自動車は今、大きな変わり目にある。織機から自動車への転換に次ぐ、「2度目の大転換」といっていい。豊田家直系の豊田章男は、長い歴史を有するトヨタをどこへ持っていこうとしているのか。

章男の「経営力」は、多少強引にいえば、大きく2つの要素に分けることができる。

1つは、「豊田章男」という個人に備わるパワーだ。先天的な気質に加え、大学時代にホッケーに打ち込み、米国留学し、友人を得、現地企業で働くなど、社会生活で彼が独自に身に付け、築き上げた人間的パワーである。

もう1つは、創業家出身ということから来る数々の経験や苦難によって培われた、継承者パワーだ。それらが現在の章男の「経営力」において、ぶれない軸を形成している。

トヨタグループは、戦前生まれとはいえ、財閥系の企業とはまったく異なるルーツを持つ。天才技術者の本田宗一郎が起こしたホンダや、井深大と盛田昭夫が世界企業に育てたソニーといった戦後派企業とも、まったく異なる。“発明王”の豊田佐吉に連なる独創技術を駆使し、発展させながら、織機から自動車へ転換し、長年にわたって日本経済を支えてきた。

佐吉の遺訓からなる「豊田綱領」、二宮尊徳の教えが根底に流れる