JR北海道の新幹線H5系。JR東日本のE5系とほぼ同じ性能を誇るが、速度を制限される青函トンネルでは宝の持ち腐れ(撮影:今井康一)

2030年度末の北海道新幹線・新函館北斗─札幌間の開業に合わせ、北海道と本州を結ぶ鉄道貨物輸送を船舶にシフトさせる議論がひそかに進んでいる。最悪の場合は、JR貨物が北海道から撤退する可能性もある。

東京─札幌間の空路は年間900万人を運ぶ。その一部が新幹線に移ればJR北海道のメリットは大きいが、現行の東京─新函館北斗間の所要時間は約4時間で、新函館北斗─札幌間の所要時間は1時間程度。合計で5時間近くかかる。これでは新幹線開業後も航空機の優位は揺るぎそうにない。

そこで、東京─札幌間を4時間半で結ぶための方法が検討されている。新幹線で約4時間半かかる東京─新山口間における新幹線と航空機の利用比率は約3対7。この数字を当てはめれば、東京─札幌間では約300万人の旅客が航空機から新幹線にシフトする。

時間短縮の方策は2つある。まず、車両性能の向上だ。JR東日本は次世代試験車両「ALFA‐X」を開発し、営業最高速度の引き上げに動き出した。また、盛岡以北の区間は法令上最高時速が260キロメートルに抑えられているが、国土交通省はそれを時速320キロメートルに引き上げることを検討中だ。

冬の北海道を走るJR貨物の列車

時間帯を区分して走行

だが、それだけでは不十分。最大の障害は、青函トンネルと前後の区間を合わせた約82キロメートルを新幹線とJR貨物の在来線貨物列車が共用していることだ。2本のレールの間隔は新幹線が1435ミリメートル、在来線が1067ミリメートルと異なり、そのままでは共用走行できない。このため三線軌条という特殊な方法で両者の共存を実現した。

貨物列車の最高時速は110キロメートル。新幹線が時速260キロメートルで走れば前方の貨物列車に追いついてしまう。また、高速走行する新幹線が貨物列車とすれ違う際に生じる風圧が安全を損なうおそれもあり、青函共用区間における新幹線の最高速度は時速160キロメートルに抑えられている。