週刊東洋経済 2019年10/26号
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3640人のアンケート回答でわかった親の介護の「悩み」と「不安」

「正直、母の介護は苦行としか思えません」。認知症の実母(87)と同居する武田陽子さん(仮名、53)はそう語る。

父に先立たれ、千葉県の実家で一人暮らしをしていた母との同居を決意したのは3年前。きっかけは近所の人からの指摘だった。年々耳が遠くなり、ゴミ出しの日を間違えたり、回覧板を回せなかったりする母を気にかけ、武田さんに電話をかけてきたのだ。

弟の家族は同居が難しく、長女の武田さん一家が実家に引っ越すことになった。夫は地方に単身赴任中のため、現在は高校3年生の一人息子と母との3人暮らしだ。武田さんがフルタイムの仕事の傍ら家事、母の日常の世話、地域の自治会役員などを一手に引き受けている。

当初は物忘れ程度だった母の認知症は日に日に進行した。要介護1と認定されたが、今では日付や曜日がわからない。今日食事をしたかどうか、薬を何錠飲んだかも覚えていない。

一方で、物忘れをする自分を責め、「こんな状態で生きていてもしょうがない、早く死にたい」と毎日訴えられる。そんな母を近くで見守り続けることは、「正直、気がめいる」と武田さんは話す。

物を頻繁になくし、通帳や印鑑を「盗んだ」と怒り出すこともたびたびだ。また、何度言い聞かせても思春期の息子の部屋に入り、物を勝手に動かしてしまう。普段は我慢する息子が不満を隠せず、苛立つこともある。そんな祖母と孫の関係に気をもみ、一時期は食事の時間を分けて、衝突を避けるよう工夫していた。

母は昔から気が強く、頑固なタイプ。プライドが高いため、認知症検査の受診にもなかなか応じてくれなかった。「まだ私は大丈夫」と強く言われると、強引に連れていくこともできない。その後、別の病気で入院した際に医師からの説得もあり、ようやく検査を受診。認知症であることを告げられた。

日中、武田さんが仕事に行っている間は週2回デイサービスに通っている。これも母の気持ちが乗らないと、自ら電話をして断ってしまうことがある。「行政などのさまざまなサービスがあっても、本人が嫌と言ったらそれ以上支援が進まない」(武田さん)。認知症で判断力が低下している中、親を説得して適切な支援を受け入れてもらうことの難しさを痛感している。

このまま公的な支援やサービスを頼れなければ、自宅で介護を続けていくことは難しい。しかし、年老いた親にどう伝えればいいのか……。本人が嫌がる場合、家族だからこそ強く言えない部分もある。ましてや今から「万が一のときにどうするか」などという話は到底できそうにない。

写真はイメージです(プラナ / PIXTA)

子の都合での介護に後悔