吉野名誉フェローが語り尽くした電池とクルマの未来 【プラスオリジナル】1万字インタビュー

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昨年のインタビューで、リチウムイオン電池の過去・現在・未来を語った吉野彰氏。日本企業はもっと危機感を持つべきだと強調した。

ノーベル賞の発表を受けて旭化成の本社で会見を行った吉野彰名誉フェロー(撮影:今井康一)
「ノーベル化学賞のフィールドは広いので、電池のようなデバイス(部材)はなかなか順番が来ない。『順番が来たら絶対に取りますよ』とは言っていたものの、まさか、まさかです」。受賞者が発表された約30分後、旭化成の本社で開かれた会見で、吉野氏は興奮気味にこう語った。
10月9日、スウェーデン王立科学アカデミーは今年のノーベル化学賞受賞者を発表。受賞者は旭化成の吉野彰名誉フェロー、米テキサス大学のジョン・グッドイナフ教授、米ニューヨーク州立大学のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム卓越教授の3人で、リチウムイオン電池の開発で主導的な役割を果たしたことが評価された。
吉野名誉フェローは、リチウムイオン電池の過去・現在・未来をどのように捉えているのか。2018年6月30日号「怒涛の半導体&電池」で掲載したインタビューを拡大版で掲載する。

 

——リチウムイオン電池が最初に採用されたのはビデオカメラでした。開発当時、今のようにさまざまIT機器に使われている世界を想像していましたか。

よく聞かれますけど、残念ながらそういう世界を想像していたわけではなくてね(笑)。

当初、ターゲットにしていたのは8ミリビデオカメラ用電池です。当然、その時点ではまだ携帯電話とかスマートフォンとかノート型パソコンなんてまったく世の中にないしね。

現在のビデオカメラにも当然、リチウムイオン電池が使われていますが、全体のコンマ2%なんですよ。だから、(今の状況は)だいたい当初予想していたマーケットのだいたい500倍。

——それはすごい。

結果的には、IT機器が普及していくことで電池の使用も増えていったんだけど、スタート時点ではとにかくビデオカメラに搭載されたら大きなマーケット捕まえれますよ、という感じでした。

——今やIT機器だけでなく自動車にも。例えば、米テスラの電気自動車(EV)には円筒型のリチウムイオン電池が何千本も入っています。

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