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取引を承認した役員が今の経営を担う“怪" 積水ハウス地面師事件の責任はいずこに?

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事件後の2018年1月、仲井取締役(中央)が社長に昇格する人事が発表された。阿部社長(左)は会長、稲垣副社長(右)は副会長に(時事)

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「阿部にやられた!」

地面師らによる詐欺事件の発覚から半年後の2018年1月24日。積水ハウスの和田勇会長(当時)は取締役会終了後、側近に電話でそう告げたという。

この日、積水ハウスでは新たなトップ人事が内定し、和田会長の退任が決まった。理由について積水ハウスは「ガバナンス体制の刷新と経営陣の若返りが目的で、詐欺事件とは何ら関係がない」とした。だが実態は、和田氏から引責辞任を迫られた阿部俊則社長(当時)による謀反だった。

その日の取締役会は荒れに荒れた。まず調査対策委員会から、地面師事件に関する調査報告書を受領する。これをもって和田氏は、事件の責任を問う形で阿部氏の解任を提案した。

和田氏は国内事業を担う阿部氏の責任を重くみて、周囲にも「阿部さんには辞めてもらう」と漏らしていた。取締役会前夜の酒席では、賛同する取締役たちとともに阿部氏の解任動議に賛成の挙手をする練習までしていた。

が、番狂わせが起きた。阿部氏の解任を求める動議は予定どおりに提出されたのだが、あれだけ挙手を練習したはずの役員の手が動かない。実は和田氏の動きを事前に察知した阿部氏が水面下で票集めに奔走し、挙手の練習をしていた役員2名が阿部氏支持に回ったのだ。解任動議は当事者の阿部氏を抜いた取締役10名で決議され、5対5の賛否同数で否決された。

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