他人の土地の所有者になりすまし、勝手に第三者へと売り飛ばす──。そんな離れ業をやってのける闇の地面師グループが、大阪市に本社を置く大手住宅メーカーの積水ハウスから63億円(被害額は55億円)をだまし取った、2年前の大型詐欺事件はまだ記憶に新しい。

「地主」や「地主の内縁の夫」「地主の財務アドバイザー」といった幾人もの「なりすまし」役たちが登場し、有名企業を欺いて大金を奪った事実が明らかになると、まるで経済犯罪小説のようだと大きな話題になった。地面師ら十数名が逮捕され、すでに実刑判決が下った人物もいる。

だが、被害発覚から2年以上を経た今も、事件の全貌が解明されたとはいいがたい。中でも、「なぜ大手の積水ハウスが、詐欺師連中にまんまとだまされたのか」という大きな疑問は残ったままだ。

実は、その答えを知るうえでも極めて重要な、積水ハウスの内部資料が存在する。事件後、公認会計士や弁護士ら4名の社外監査役・取締役で構成する調査対策委員会が、数カ月かけて作成した調査報告書だ。事件に関わった役員や社員のメールデータを収集し、聞き取り調査も行って事件の詳細をまとめ、2018年1月24日の取締役会に提出された。

ところが、調査報告書は極秘扱いとなり、同年3月に社外に公表されたのは、事件の概要や再発防止策に触れたわずか2ページ半の短いリリースのみだった。そこには、「いつ」「誰が」「どこで」「何を」といった肝心の具体的事実はほとんど記されていない。「捜査上の機密保持への配慮」を理由に、経営陣がそれ以上の公開を拒んだのだ。

積水ハウス社内の調査対策委員会が事件の調査報告書を作成したが、公表されたのは3枚の短いリリースだった(下)

事件の経緯を知る、積水ハウスのある関係者は、本誌の取材にこう話した。「地面師たちが狡猾(こうかつ)で手口も巧妙だったから、さすがの積水もだまされてしまった……。世間はそう思ったかもしれないが、実際はそんな単純な事件じゃない。調査報告書には、経営陣が外に知られたくない詳細な経緯がつづられている」。

はたして、そこにはどんな事実が記されているのか。本誌は調査報告書の全文を独自に入手。関係者の証言を交えながら、事件の全貌に迫る。(〈 〉内は調査報告書からの引用。報告書は実名だが、本記事では一部個人名をX、Zと表示。肩書は事件当時のもので、年はすべて17年)