おおき・ひであき 1982年生まれ。2005年博報堂入社、10年から博報堂ケトル。国内ではACCグランプリ・総務大臣賞、TCC賞など、海外ではカンヌライオンズ、D&ADなど、有力な賞を相次いで受賞。(撮影:今井康一)
広告は世の中を最も敏感に映す鏡ともいわれる。そんな業界で先端的な手法を追求している1人がクリエーティブディレクターの大木秀晃だ。若くして国際的な広告賞を受賞し、社会性のある作品は各界から注目されている。同時に、新しい働き方を提案し、新たなビジネスに挑戦するなど、広告の枠組みにとらわれない情報発信をしている。社内外で想定外の提案を行い「パニック」をいとわない、大木の仕事論とは?
週刊東洋経済2019年10月19日号の内容に加え、後半「大木秀晃をこう見る」では箭内道彦(クリエーティブディレクター)、吉松徹郎(アイスタイル 社長 兼 CEO)、若林恵(『WIRED』元編集長、編集者)各氏の視点を掲載しています。

──国際的な広告賞である「カンヌライオンズ」で2016年に銅賞を受賞。17年にはダイレクト部門(消費者に具体的な反応と行動を起こさせるダイレクトコミュニケーション部門)の審査委員を務めています。以前から国際的な賞に関心があったのですか。

ずっと若いときはカンヌライオンズはよく知らなかったんです。仕事を始めた当初は、販売促進のための商品の「おまけ」の企画ばかりで、広告での世界的なトレンドや評価されている事柄に興味が湧かなかった。自分からは程遠い世界という感覚でした。でも07年のカンヌライオンズの報告会が博報堂社内であって、そこで話を聞いたら、カンヌに行きたくて仕方なくなりました。

──なぜ行きたいと?

このときすでに世界の広告の世界では、人の行動を変えるようなプロジェクトが評価されていたからです。これは昔から自分も関心があったことだったんです。

07年にカンヌのチタニウム賞を受賞し話題になったユニセフの「タップウォータープロジェクト」。米ニューヨークのレストランで、ただで出される水に1ドルを支払い、アフリカの井戸掘りの資金にするキャンペーンでした。これは2つの点で当時の日本と違っていた。1つは企業の営利活動でなく社会貢献活動であった点、もう1つはコミュニケーションの力が評価されていたことでした。「世界の広告業界はこうなんだ」と興味を持ちました。

翌年にカンヌに行ったのですが、目の前で大学の先輩でもある田中耕一郎さんがクリエーティブ(制作)ディレクターを務めたユニクロの「UNIQLOCK」がグランプリに輝きました。この作品は通常のテレビCMではありません。また映像の巧みさだけをアピールしたものでもありませんが、ユニクロの世界観を多角的に表現し、高く評価されました。カンヌのコンペでは伝える仕組みと人を動かす方法論が大事であることを目の当たりにしたわけです。

──テレビCMではない何かを求めていた大木さんが、カンヌで何かを感じ取ったわけですか。