小路明善(こうじ・あきよし)/1951年生まれ。75年青山学院大学法学部卒業、同年アサヒビール入社。人事戦略部長などを経て、2011年に同社社長に就任。18年3月から現職。(撮影:尾形文繁)
若者のビール離れなどを背景に、国内ビール消費量は年々減少傾向にある。海外の先進国でも、健康志向の高まりとともにビールの消費量が減っている。この厳しい環境をどうやって乗り越えるのか。国内でビール販売シェア首位、アサヒグループホールディングス(HD)の経営トップを直撃した。
(注)本記事は『週刊東洋経済』2019年10月19日号に掲載されたインタビュー記事のロング版です。

 

——今年7月、アサヒグループHDとしては史上最高額で、豪州のビール会社カールトン&ユナイテッドブルワリーズ(CUB)買収に踏み切りました。1兆2000億円を投じ、2020年度の第1四半期(20年1~3月期)中に、CUBの全株式を取得する予定です。

2016年にイタリアやオランダなど西欧のビール会社を、翌2017年にはチェコなど中欧・東欧のビール会社を買収した。これによって日欧2極体制の拠点ができあがった。ただ、もう1拠点あるのが理想だと考えていた。今回の豪州ビール会社買収で、日欧豪の3極体制ができる。この状態は、アサヒグループの完成形に近い。

——なぜ豪州なのですか。

CUBの親会社であるアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI)は、豪州ビール市場のおよそ半分のシェアを握っている。CUBは安売りもしないため、収益力が高い。アサヒグループがこれまで進めてきた、「高価格化」という戦略に合致している。

豪州以外の地域に関しては、例えばアフリカはアサヒグループが目指す高価格帯ビールの市場ができあがっていない。南米には政治的なリスクがあるし、中国は現地企業に出資しても株式の過半数を握れないので、経営に関与するのが難しい。東南アジアは地元メーカーの競争が激しい。北米は魅力的な市場だが、ABIなどの強豪がひしめき合っており、進出しにくい。

つまるところ、すでに地盤がある欧州をさらに広げるか、消去法で豪州か、と買収のターゲットを絞っていた。その考えから、今年の早い時期にABIのカルロス・ブリトCEOと会った際に、「豪州事業に強い関心があり、できれば(CUBを)買収したい」と伝えていた。だから、今回彼らから連絡が来た際には、短期間で交渉することができた。

——なぜ3極体制を志向するのですか。