日本福祉大学 福祉経営学部教授 藤森克彦(ふじもり・かつひこ)1965年生まれ。長野県出身。国際基督教大学教養学部卒業。同大学大学院行政学研究科修士課程修了。日本福祉大学にて博士号(社会福祉学)取得。2017年から現職。みずほ情報総研主席研究員も務める。専門は社会保障政策。著書に『単身急増社会の希望』など。(撮影:尾形文繁)

大学の講義で驚くのは、「公的年金保険は破綻する」と考える学生が想像以上に多いことだ。「現行制度には、少子高齢化の進展に合わせて給付水準の伸びを抑える仕組みなどがあるので、破綻はしない」と説明しても、「給付水準が低下して、自分たちはまっとうな額を受給できない」と不安を持つ学生は依然として多い。

ところで厚生労働省は、本年8月に公的年金保険の財政検証を発表した。財政検証は公的年金保険の「定期健診」とも呼ばれ、5年に1度行われている。ここでは、年金不安との関係から、財政検証を読み解くうえでの留意点と注目点を指摘していこう。

まず留意点は、財政検証で給付水準を測る物差しは所得代替率なので、「給付水準の低下」を「年金額の低下」と混同してはいけないことだ。所得代替率とは、現役男性の手取り収入に対する年金額の割合をいう。2019年度のモデル世帯(40年間厚生年金に加入した夫と専業主婦の世帯)の所得代替率は61.7%である。