郷原氏は、今回の問題について「短期間で郵政民営化の成果を出そうとしたかつての構図とほとんど同じだ」と語った(撮影:今井康一)
かんぽ生命の不適切営業問題の本質は何か。かつて「かんぽの宿」問題など一連の不祥事を受けて総務省が2010年に設置した「日本郵政ガバナンス検証委員会」の委員長を務めた郷原信郎弁護士に聞いた。

 

――日本郵政グループは9月30日にかんぽの不適切営業の中間報告についての記者会見をしました。

マスコミでは「保険料の二重払い」という表現で批判してきたが、日本郵政は、「保障の重複が生じた事案」という表現を使ってきた。契約が重複しているだけで、保険料だけが二重払いになっていたのではない。それが、顧客の意向に反していたという事由が明らかにならない限り、不適切ではないと言いたいのだろう。

――問題となった不適切営業18万3000件の4割に当たる7万5000件が「保険料の二重払い」、日本郵政が言う「保障の重複が生じた事案」です。

「保険料の二重払い」が不適切営業に当たらないのならば、問題事案は激減する。9月30日の会見では、この点について記者から質問がなかったが、この表現の違いは、今回の問題の根本に関わる。顧客側が、一時的に保険料が倍になるように、敢えて契約を重複させたとは思えない。契約が重複し、支払いが二重になっているのは、顧客の意向に反するものとの「推測」が働く、それは原則として「不適切」ととらえるべきだ。それを「保障の重複」という言い方をすること自体が、そもそもおかしい。「二重払い」でなければ「二重契約」と表現するべきだ。

――かんぽ生命保険から販売業務を受託している日本郵便の横山邦男社長は8月の記者会見で「お客さま本位」がかんぽ営業の基本だと強調しました。

そもそもお客さま本位とは、金融庁が打ち出している「フィデューシャリー・デューティー(受託者責任。信認を受けた者が履行すべき義務。金融機関は顧客利益を最大限にする義務を負い、顧客利益に反する行為をしてはならない)」を果たすという話だ。フィデューシャリー・デューティーを果たすには、証券会社など他の金融機関と同じような品揃えが必要になる。一人一人の顧客の属性や立場、事情をきちんと把握して、「おたくならこういうのが一番いい」、「高齢者のならこれ」、「年齢が低い人ならそれ」というのを勧めていくのがフィデューシャリー・デューティーだからだ。

ただ、それを徹底していくことは商品開発面などで保険業法や郵政民営化法による二重規制を受けている郵便局には無理な面がある。ユニバーサル・サービス維持という観点では全国で同じ商品を揃えてあることが必要だ。郵便局で扱う保険は、簡易な保険でないといけないことになっている。簡易なものだからこそ、全国の郵便局で扱えるわけだから。

フィデューシャリー・デューティーの方向を打ち出すということは、品揃えをもっと増やせるように新商品を認めてくださいという話になる。それは、ある意味ではユニバーサル・サービス維持という使命を踏み出してしまうことになる。最終的には、そうならざるを得ない。