田尻嗣夫(たじり・つぎお)/1940年大阪府出身。1965年大阪市立大学卒、日本経済新聞社入社。1977年ロンドン特派員、1987年米国編集総局編集部長(在ニューヨーク)。大阪本社編集局次長兼経済部長等を歴任後、1994年東京国際大学経済学部教授。経済学部長を経て2010年同大学長。総務省の郵政行政審議会代表代理や郵政行政分科会会長を務める。「ザ・シティ 国際ビジネス戦争の内幕」「世界の金融市場」「世界の中央銀行」「中央銀行 危機の時代」「国際金融の基礎知識と記事の読み方」など著書多数
20年以上、郵政問題を研究してきた田尻嗣夫・東京国際大学名誉教授にかんぽの不適切営業について、問題の深層を聞いた。その全文を「週刊東洋経済プラス」のオリジナルコンテンツとしてお届けする。

 

――8月31日に日本郵便は10月からかんぽの積極的な営業を段階的に再開すると社内外に発表しました。再開直前の9月25日になって、再開延期を取締役会で決議しました。

これからまだ問題が出てくるのかもしれないのに営業を再開して大丈夫なのか、と私は疑問視していた。6月に約9万件が発覚した後にさらに約9万件が見つかった。その後にアフラックの保険料二重払いや無保険状態で10万件も出てきた。こういう形でどんどん大型のスキャンダルがまだ出てくるのではないか。そうした中での10月の営業再開は時期的に非常にまずい。

10月というのは、アフラックの「条件付き解約制度」のシステム対応ができるタイミングということなのだろう(編集部注:アフラックではがん罹患者の加入を避けるため、加入後3カ月間は保障を受けられない。が、乗換契約の場合は例外的に乗換後すぐに保障を受けられる。これを「条件付き解約制度」という。日本郵便やかんぽ生命ではシステム上で対応しておらず、この制度の導入を見送ってきた。このために乗換時に3カ月間の保険料二重払いや無保険状態が生じてきた)。

――なぜ対応しないのか、意味が分からないですね。

システム対応するのは簡単な話だろうから、システムの問題ではないと私は思う。西日本新聞の取材があって電話口で聞いたアフラックの実状にはじつのところびっくりした。時間稼ぎの結末が、どういうことになるかちょっとでも現場の声を聴く耳があれば事態は防げたはずだ。

日本郵政、日本郵便やかんぽ生命の経営陣は、今回の問題を「現場の不心得な者がやったことで、その再発を防止する」というスタンスのようだ。自分たち経営陣の問題とは考えていないのではないか。

巻物を読む長門社長に異例のヤジ

8月下旬に熊本で日本郵政グループ労働組合(JP労組)の大会があり、びっくりしたことにテレビカメラが6台も入っていた。その中で労組委員長は、5つの理由を挙げて、経営陣をこっぴどく批判していた。

――グループとしてのコーポレート・ガバナンス(企業統治)が利いていない、商品開発で他社に後れをとっている、企業風土が官僚的で柔軟性に欠ける、営業実績をあげる現場の力を上層部が過信しマネジメント力が高まっていない、合理性の乏しい施策や経営が行われているという5点ですね。